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No.95 | | 2006 November/December |
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2型糖尿病に代表される生活習慣病の多くは、罹りやすい遺伝素因(体質)をもつ人に、長年に亘る生活習慣に基づく後天的な要因が加わって発症する疾患です。生活習慣病の成因を明らかにし、発症を予知し、予防することは、現代に生きる私たちの健康を脅かす生活習慣病を克服するうえで重要です。このたび、第41回日本成人病(生活習慣病)学会(会期:2007年1月13日・14日、会場:日本都市センター)を主宰させていただくにあたり、本学会のテーマを「生活習慣病の予知と予防」としました。
本学会は、成人病(生活習慣病)に関心を持ち、基礎的・臨床的研究に従事している医師、研究者およびコメディカルスタッフが1年に1回結集し、研究成果を発表・討議し、共有する場です。内科と外科を専門とする医師のみならず、多くの実地医家の先生方に参加していただくよう、明日からの診療に役立つ学術プログラムといたしました。
特別講演として小坂樹徳先生に「2型糖尿病の予知と予防」と題してご講演いただきます。先生のライフワークの一端を拝聴できるものと楽しみにしています。プレナリーレクチャーでは、「メタボリックシンドローム―研究の展開」、「がんの遺伝子診断」、「食と生活習慣病」の3題を、教育講演では、「生活習慣病の診療ガイドライン」、「前立腺癌治療最前線」、「食事と認知症」の3題を、それぞれ第一線の研究者からわかりやすく発表いただきます。
産業医の先生方には、「産業医における生活習慣病の予防と治療」をテーマにシンポジウムを行います。そこでは、産業医の役割のほか、うつ病、睡眠時無呼吸症候群および NASH をとりあげました。日本医師会の認定産業医の更新の研修会として申請予定です。また、ミートザエキスパートとランチョンレクチャーにおいても、成人病の診断・治療における最新情報、興味ある分野についてとりあげましたので、多くの皆様のご参加を期待しています。
学会の2日目(1月14日)には、一般向けの市民公開講座を隣接した会場で開催致します。「元気で長生き!」をテーマに、著名な講師の方々をお招きして開きますので、ご期待ください(詳細はこちらを参照ください)。
これまで、わが国でも海外でも、小児糖尿病といえば1型糖尿病である、小児や10代の若者が2型糖尿病を発症する頻度はきわめて低い、と考えられてきました。
そんななか、当センターは世界に先駆けて1990年に、10代の若者にも2型糖尿病が存在することを報告しました。その後、日本の他の医療機関からも同様の報告がなされ、最近は13、14歳以降は1型糖尿病より2型糖尿病の頻度の高いことがだんだん明らかにされてきました。
一方、わが国では以前から、腎炎の患児を早期に発見したいと尿タンパク陽性児童の早期検出の目的で、学校検尿システムが実施されてきました。東京の一部では1992年以前から開始されていましたが、1992年からは尿糖検査も組み込まれた学校検尿システムが義務化されるようになりました。これは若年糖尿病の早期発見と将来の糖尿病合併症の発症阻止のために、画期的な政策であったと考えられます。
当センターには、以前から多くの若年発症2型糖尿病患者が重症の糖尿病性合併症を発症して受診して来られます。30、40代でありながら重大な合併症を発症していて、良好な QOL を保持することができない。来院される患者さんは年を追うごとに増加する傾向があります。臨床背景をマッチさせた1型糖尿病患者さんと比較しても2型糖尿病患者さんの治療成績が悪いことがわかりました。
また、2型糖尿病患者さんを学校検尿で発見された群とそれ以外発見群に分けて、当センター初診時の合併症の頻度や重症度を調査したことがあります。学校検尿で早期に発見されても当センター受診時のころには有意差がないことがわかりました。
注目すべきことに、学校検尿で尿糖陽性を早期に指摘されておりながらその後医療機関への受診がなされなかったり、受診しても2型糖尿病に対して病識をもって自己管理していくことを教育されていなかったり、その他のいろいろな原因で治療中断してしまって、重症の合併症を併発してしまったことがわかりました。
わが国の若年発症2型糖尿病患者数の増加阻止および合併症の重症化の阻止に、学校検尿システムだけで十分であったかどうかの評価がなされないまま、今に至ったといえます。
重症合併症患者さんが増えることは患者さん自身の生活の質(QOL)面でも、また医療経済的にも、大きなダメージとなります。少子化時代に突入したわが国において、子どもの数だけでなく、これらも大きな問題となりましょう。
欧米でも、昨今若年発症2型糖尿病の存在が知られるようになってきました。しかし、日本における臨床、疫学研究が一歩も二歩も先を進んでおります。
これまでの調査実績を踏まえて、全国規模で若年2型糖尿病の発症率を調査し、糖尿病性合併症の発症率を調査することは、当センターの使命であると考え、本年から調査研究開始の運びとなりました。御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
第41回日本成人病学会の開催にあたり、生活習慣病という毎日の暮らしと結びついているいろいろな病気について理解していただくために、一般向けの市民講座を開催します。是非ご参加ください。
最近、メタボリックシンドロームをはじめ生活習慣の改善を必要とされる病気がマスコミをにぎわしています。厚生労働省も6年前から「健康日本21」という21世紀における国民健康づくり運動を政策として展開して、生活習慣の改善をはかってきました。
そこで、生活習慣病とそれらの原因となる生活習慣について厚生労働省の石井安彦先生にご講演していただくことになりました。「健康日本21」キャンペーンで、国はどのように取り組み、どのような現状で、どのような対策をし、どのような成果が出ているのかをお聞きし、生活習慣病対策に関する情報を皆様と共有したいと思います。
重い病気にかからない!だけではなく、頭も体も元気で、なるべく人に頼らず、やりたいことが自由にできて長生きしたいものですね。そのために、まず足を鍛える! テレビ、ラジオでおなじみのマラソンランナーの増田明美さんに、楽しいお話を交えて足を鍛える方法を教えていただきます。
増田明美さんは1984年のロサンゼルスオリンピックに出場、1992年に引退されてからもスポーツジャーナリストとして、視聴者に分かりやすい、かつ選手の立場に立った解説を多くのスポーツ番組でなさっています。プロのランナーだからこそ教えることのできる初心者向けの足を鍛える方法をお聞きしたいと思います。
そして、頭を鍛える! 誰もみんな呆けたくはありません。テレビや、多くの著書、また頭を鍛えるゲームソフトの監修でも有名な川島隆太先生に、「脳を知り、脳を鍛える」というタイトルで、ご講演をいただきます。今回のもうひとつの目玉講演です。
"昨日の夕ごはんおぼえていますか"というCMで有名なゲームのことは知っていても先生の本来のご研究について知らない方が多いと思います。先生は、現在東北大学加齢医学研究所と未来科学技術共同研究センターの教授を併任されています。人間の脳の働きを調べるブレイン・イメージング研究の第一人者です。講演会を聞くチャンスも少ないので是非この機会に脳の活用の秘訣を伺いましょう。
入場は混雑が予想されますので、はがきでの申し込みとさせていただきます。下記の要領でお申し込みください。たくさんの方のご参加をお待ちしています。
応募要領:官製はがきに入場希望、住所、氏名をご記入のうえ下記宛先までお送りください。入場券を送付いたします。なお、応募多数の場合は、抽選となりますのでご了承ください。
(応募締切:2006年11月15日当日消印有効)
送り先:「日本成人病(生活習慣病)学会 市民公開講座」事務局
〒113-0034 東京都文京区湯島3-31-5 YUSHIMA3315ビル3階 アクセスブレイン内
TEL:03-3839-5036/FAX:03-3839-5035
第41回本学会の概要はこちらを、市民公開講座についてはこちら参照ください。