DIABETES NEWS No.72
    No.72
     2002 
     WINTER 
 

糖尿病週間の行事に参加を
「合併症を防ごう-血糖・血圧・体重」、これは全国糖尿病週間の日本糖尿病協会のメインテーマです。
 糖尿病の治療の目標は網膜症、腎症、神経障害などの特有の慢性合併症を防ぎ、糖尿病を持たない人と同様の生活の質 (QOL) を保ち、長生きできるようにすることにあります。合併症を防ぐために、血糖値を良好に保つことは重要ですが、血糖値とともに血圧や体重にも注意を払わなければなりません。動脈硬化症も含めて、糖尿病の患者さんに起きやすいさまざまな合併症を予防するためには、多面的なアプローチが是非とも必要なのです。

「より良い生活の質を求めて」
 糖尿病週間恒例の東京都糖尿病協会(東糖協)の講演会が11月9日(土)に九段会館で開催されます。東糖協の講演会の基調テーマは「より良い生活の質を求めて」です。
 合併症が進行した場合には、視力の低下、腎機能の低下、足の頑固なしびれや痛み、治りにくい足底の潰瘍や壊疽など、生活の質を著しく低下させるさまざまな症状が現れます。九段会館講演会でのパネルディスカッションでは、糖尿病専門医や糖尿病療養指導のエキスパートが食事療法、運動療法さらに薬物療法の実際について討議を行います。

「あなたもやればできる」
 九段会館の講演会では、私自身にも講演の機会をいただきましたので、「あなたもやればできる-コントロール成功例から教えられたこと-」と題してお話させていただきます。
 糖尿病は血糖値が高くても多くの場合に自覚症状が現れません。糖尿病の薬物治療は近年めざましい進歩をとげていますが、新しい薬物がよい効果をあげるためにも、食事療法や運動療法の正しい実践が前提になるのです。
 講演では上手に自己管理を行い、長期間にわたって良いコントロールを達成している患者さんを紹介したいと思います。

■第38回糖尿病週間 東糖協行事■

◆講演会「よりよい生活の質を求めて」◆
   *入場無料:どなたでも参加できます。 

日 時 平成14年11月9日(土) 午後1時30分~5時
会 場 九段会館大ホール(TEL. 03-3261-5521)
講 演 「あなたもやればできる―コントロール成功例から教えられたこと―」
   東京女子医大糖尿病センター所長 岩本安彦
パネルディスカッション 「より良い生活の質を求めて」
(1) 楽しめる食事療法の実際(浦部康夫先生)
(2) 楽しめる運動療法の実際(西村一弘先生)
(3) QOL を考えた薬物療法(植木彬夫先生)
(4) こうして防ごう糖尿病の合併症(中尾俊之先生)

◆医療・栄養相談と展示◆
   *入場無料:どなたでも参加できます。

会 期 平成14年11月12日(火)~11月18日(月) 午前10時~午後7時30分
  但し17日(日) は午後7時まで。相談や測定は毎日6時に終了しますのでご注意ください。
会 場 日本橋三越本店(7階催物会場)
内 容 a. 専門医、栄養士による医療・栄養相談
 b. 臨床検査技師による血糖測定
 c. 視能訓練士が無散瞳カメラで眼底写真撮影
 d. 体脂肪率測定
 e. 糖尿病に関するビデオ上映・パネル展示
主 催  東京都糖尿病協会
問合せ先 東京都糖尿病協会 TEL. 03-5483-2636

 


糖尿病眼手帳作成の経緯
 近年、糖尿病患者数の増加に伴い、内科と眼科との連携がますます重要になってきました。両者の密接な連携は眼の合併症が悪化するのを防止するため、また適切な治療のタイミングを通院中断によって逸しないために非常に重要です。これまでは診療情報提供書(提供書)や糖尿病健康手帳(糖尿病手帳)が連携のツールとして利用されてきましたが、提供書は多忙な外来の中で記述するには煩雑であり、また糖尿病手帳は提供書に比較すると簡便ですが、眼科所見の記載箇所が少なく患者さんが自分の眼の状態を理解しにくいという問題がありました。これらの問題を解決するツールとして、平成13年3月に新たに糖尿病眼手帳(眼手帳)作成が提案され、糖尿病眼学会の中に糖尿病眼手帳作成委員会を設け、1年間の作成準備期間を経て平成14年5月に完成し、同年6月から全国的に使用することができるようになりました。

糖尿病眼手帳の内容
 眼手帳は糖尿病手帳と併携してもらうために大きさを揃え、内容を出来るだけわかりやすく簡潔にしました。眼手帳の目的は眼科医と内科医が患者さんを介して共通の情報をもつこと、眼科の情報を内科の診療に役立ててもらうこと、患者さんに自分の目の状態を正しく理解してもらうことにあります。内容は、眼科受診のススメ、患者さん本人の記録、連携医療機関の記録、糖尿病の診断基準、糖尿病網膜症の病期分類、経過表、お役立ち情報、眼球断面図、正常眼底写真、網膜症の眼底写真などからなります(計32頁)。眼科受診のススメには網膜症の進行、自覚症状、精密眼底検査の目安、増殖網膜症の危険性、定期的眼科受診の必要性などが書かれています。経過表の内容としては、受診日、次回受診予定日、矯正視力、眼圧、白内障の程度、網膜症の病期、網膜症の変化、眼科的治療内容が書けるようになっており、計18回分の受診内容を記述できます。実際の記載は各眼科の先生方の判断に委ねられますので、詳しくは眼科の先生にお聞きください。

糖尿病眼手帳の配布
 平成14年8月31日現在、4,000人以上の眼科医から25万冊以上の眼手帳の請求を受け、全国的規模で配布されました。これまでは眼科の先生方に普及するため、まず眼科の先生を中心に配布してきましたが、今後は内科の先生方にも配布して患者さんに渡してもらう予定です。患者さんには眼手帳を内科の先生に見てもらい眼科の情報を提供するとともに、患者さん自身も自分の眼の状態について正しく理解してもらうことを切望しています(両手帳を一緒に所持できるビニールカバーもあります)。

今後の展望
 眼手帳を多くの眼科や内科の先生方に啓蒙して、糖尿病手帳とともに内科と眼科との連携に積極的に活用してもらう予定です。また、内容も先生方や患者さんのご意見を聞いて、さらに活用しやすいものにして改善していく予定です。

入手方法などのお問合せは...
糖尿病手帳:日本糖尿病協会
  電話03-3437-1388/FAX.03-3438-1007
糖尿病眼手帳:日本糖尿病眼学会
  電話03-3811-0309/FAX. 03-3811-0676
 

糖尿病手帳 糖尿病眼手帳

 


ブダペストに11,000名参集
 本年のヨーロッパ糖尿病学会は9月1日-5日にブダペストで行われました。ブダペストは、低血糖後におこる高血糖現象を発見した Somogyi 先生を生んだハンガリーの首都であり、ドナウ川の両岸に市街地が広がる夜景が非常に美しい都市でした。ちょうど大規模な花火大会があり、打ち上げられた花火が印象的でした。学会には世界中から11,000名もの人が参加し、活発な討議が行われました。

糖尿病の一次予防
 昨年の本学会では、ライフスタイルの改善によって耐糖能異常から糖尿病への発症が著しく抑制されることを明らかにした DPP (Diabetes Prevention Program) が話題の中心でしたが、本年も一次予防に関する研究が数多く発表されました。Camillo Golgi 賞を受賞したフィンランドの Tuomilehto 教授は、"Prediction and Prevention of Type 2 Diabetes - Episode 2" というタイトルで FDPS (Finnish Diabetes Prevention Study) の成績を中心に、一次予防の成績を詳細に発表されました。「ライフスタイルの改善は糖尿病の発症を58%抑制でき(この数字は DPP と FDPS で完全に一致しています)、糖尿病は予防可能な病気である」と強調されていました。
 薬物による一次予防では、チアゾリジン誘導体、アカルボース、脂肪吸収抑制薬 Orlistat(日本では未発売)、アンギオテンシン変換酵素阻害薬の有意な効果が発表されました。糖尿病の一次予防を行うと、大血管障害や高血圧の発症も抑制できるという成績も散見され、今後数多くのデータが発表されることと思います。

糖尿病や大血管障害発症の予測
 大規模臨床試験は治療効果の平均値を示して「EBM:エビデンスに基づく診療」の基礎となるデータを提供しますが、疫学的な解析により、個々の糖尿病や大血管障害が発症する危険性を予測することも可能となります。つまり、個別の治療を可能とする「テイラーメイド医療」の基礎データとしても役に立ちます。これらに関連した多くのデータが "Predictors" というセッションで発表されました。

Health Care Delivery(日常診療への科学的なアプローチ)
 大規模試験は科学的には優れた方法ですが実験的なものであり、ある意味で日常臨床とはかけ離れた治療とも言えます。"Health Care Delivery" という分野は日本ではなじみが薄いのですが、日常診療を通じてより良い治療法を見出したり、日常診療の効果を評価する方法を探ったりする、非常に実践的な事柄を扱っています。特に、「情報技術 (IT) による Health Care Delivery の発展」に関するシンポジウムは興味深いもので、今後日本でもこの分野での研究を進める必要性を感じました。

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