DIABETES NEWS No.21
    No.21
     1990 
     SPRING 
 

国際化と血糖値
 熱量とか血糖値とかいう場合に、国際間の交流が激しく、とまどうことがあります。欧米から来た患者さんの中には、平気で血糖 7.5 ですなどという人があります。これは 7.5ミリモル/リットルのことで、日本流では 7.5×18=135mg/dL のことです。WHO のすすめもあって、ヨーロッパでは 1980年までに、アメリカでは 1983年頃に血糖値の単位が変わっていますが、日本は島国ですから、全く不便なしに従来通り mg/dL を使っています。非常に低い外国人の血糖値を聞いたら、18倍してみると納得出来ます。逆に話をしていて正常は 90 といってびっくりされたら、18 で割って5といえばよいわけです (90mg/dL=5mmol/L)。

熱量もヨーロッパでは
 熱量はキロカロリーといっていますが、ヨーロッパではおおむねジュールといっています。1単位 80キロカロリーは 335キロジュールです(1kal=4.1868kJ です)。キロジュールでいうには、約4倍すればよいのですが、数が多くなりすぎて馴染めません。しかし、いずれにしても世界中で同じ単位を使わないと混乱をするわけで、やがては日本も mmol、kJ、MJ の時代に入って行くことと思います。

長期血糖コントロールの指標
 最近、フルクトサミンが糖化血清蛋白として HbA1Cに代わるものと考えられるようになりました。その単位で3mmol/L 以上は、糖尿病と考えられるといわれました。これは 3,000μmol/L と同じです。今度、新しいフルクトサミン測定法が開発されたところ、285μmol/L 以上が糖尿病の疑が大きいということになりました。測定法が違っただけで、すなわち新法では古い方法の測定法の 1/10 になってしまいます。それでも正常者の総血清アルブミン量は 560μmol/L で糖化アルブミンはその 1/20 以下ですから、新しいフルクトサミン測定法は、まだ本当の糖化血清蛋白の 10倍位高い値を出しています。長期の血糖コントロールの指標として、正確さを求めるならば、現在のところフルクトサミンより HbA1Cの方が良いであろうと、数値のよみ方からは考えています。
 


単位の全国的変更
 このたび糖化血漿蛋白の測定として利用されておりますフルクトサミンの測定値が全国的に変更されることになりました。それは測定値が従来用いられていたフルクトサミン値の 1/10 になったためで、標示する単位が変りました。ここに従来法より変更になった点を簡単に御紹介いたします。

従来法と異なる点
 まず、新キットには界面活性剤とウリカーゼが加えられ、乳びや尿酸の影響を除くように改良されました。従って今までよりもより感度が上ったものと思われます。それから従来用いていた標準液は合成アマドリ転移物である DMF(1-デオキシ-1-モルホリノフルクトース)でしたが、この物質の還元力は正しく生体内のフルクトサミンの還元力と一致しないことがわかりました。そこで、生体内の蛋白のグリケーションが主としてリジンのε-アミノ基でおこることから、glycated・lysine を標準液として用いるようになりました。即ち
 今までのフルクトサミン濃度
  = DMF のモル濃度(mmol/L)
 新キットのフルクトサミン濃度
  = glycated lysine のモル濃度(μmol/L)
 また当センターにおける健常者(20名)の実測値は次の如くです。
 今までのキットで測定した場合
  2.32±0.16mmol/L(平均値±SD)
 新キットで測定した場合
  237.0±19.4μmol/L
 これら両キット間の相関関係は良好で、相関係数はr=0.939、P<0.001 でした。また同時に測定した HbA1Cや HbA1と新フルクトサミンとの相関も良好でした(それぞれr=0.845、r=0.827)。
 なお採血時の注意ですが、抗凝固剤としてフッ化ソーダを用いると測定値が若干低く出ます。また低蛋白血症や低アルブミン血症のときにも、今まで通り低値に出ることも前のキットと変りません。

期待される新たなメリット
 フルクトサミンの測定は、今後もますます改良が加えられ、従来より用いられている血糖や HbA1Cとは別のメリットをもつ検査法として発展することが出来れば、糖尿病診療に役立つものになるであろうと思われます。
 


"無用の長物"ではなかった
 昔"無用の長物"と考えられていた食物繊維が、いろいろな作用を持つことから各方面で注目されています。糖尿病治療においても、食事の時に食物繊維の多い食品を摂取すると、食物繊維が水分を吸収して膨張し、粘性がでて、消化管内の通過が遅くなるため、食後の血糖値の上昇が抑えられることから、食物繊維の適量摂取がすすめられています。

糖尿病者の食物繊維摂取量
 最近の食生活の特徴は、澱粉など複合多糖類を多く含む穀類や豆類などの摂取量が減り、獣鳥肉類や動物性脂肪の摂取が増えています。また精製加工食品の利用と外食の依存度が高くなり、食嗜好が堅くて口当りの悪いものから、柔らかくて口当たりの良いものを好むようになっています。そのためどうしても食物繊維の摂り方が不足しがちです。
 食物繊維は1日どの程度摂取したらよいかはっきりきまっていませんが、おおよそ 100kcal 当り1g位つまり1日20~25gが望ましいといわれています。
 厚生省から発表された日本人の食物繊維摂取量は、昭和60年度で、1日1人当り約17gになっています。私達が糖尿病センターを受診した糖尿病患者さんを対象に調査した結果では、約10g、100kcal 当りに換算すると約0.75gになります。何れも適量といわれる量より、かなり少ないようです。
食物繊維の種類ととり方
オートミール 7.46%
ライ麦パン5.21 
コーンフレーク2.89 
食 パ ン2.55 
七分つき米1.73 
精 白 米0.72 
も   ち0.33 
さつまいも2.32 
あ ず き15.97 
納   豆9.60 
 
えだまめ 5.44%
オ ク ラ4.59 
めきゃべつ4.52 
ご ぼ う3.58 
ほうれん草2.50 
キーウィフルーツ2.65 
リ ン ゴ1.63 
えのきだけ2.87 
ひ じ き54.94 
わ か め37.95 
(地研の繊維表より)
 食物繊維には水に溶けやすい可溶性のものと、溶け難い不溶性のものがあり、水溶性繊維には、ペクチン(果物類)、キチン(かに、きのこ)、アルギン酸(海藻)、グルコマンナン(いも類)、難水溶性繊維にはセルロース(穀類、野菜類、豆類、果物類、いも類)、セミセルロース(豆類、穀類)、リグニン(野菜類、豆類)などがあります。
 幸い食物繊維の供給源となるこれらの食品は、心がけ次第で、しかも自然の形でとることができます。たべる食品の中に食物繊維が何g含まれているかを計算することはそれ程簡単ではありませんが、日常の食生活の中に、食物繊維を多く含む食品を積極的にとり入れることが大切です。特に日頃外食の多い方は一段と注意が必要です。参考までに食物繊維の量をいくつか挙げておきます。

このページの先頭へ