DIABETES NEWS No.130
 
No.130 2012 September/October

糖尿病診療の実態に関する
前向き調査―DIACET

東京女子医科大学糖尿病センター
センター長
 内 潟 安 子
◆Know-Do Gap
  「知っている」ことと「できる」ことは必ずしも同じではない、この間にギャップがあ ることは、だれもが知っておられることでしょう。糖尿病ケアにおいても言えること。薬物や生活そのものへの介入研究が数多く発表され、いずれも質が高く評価されるものですが、どの糖尿病患者さんもその恩恵を受けることができるわけではありません。これまで習慣づけてない運動を開始しましょう、健康的な生活をしましょうと言われても、患者さんにとっては大きな「チャレンジ」です。未知への挑戦となります。
◆糖尿病の「療養の質」を高める策は?
  糖尿病のケア、糖尿病のコントロール、糖尿病の療養というもののクオリティを高める最適の方法を模索するために、過去の報告をメタ解析した報告が出ました(Lancet,378;2251, 2012)。大事な患者教育以上に大きな影響を及ぼす策は、患者さんに関わる医師・コメディカルが十分か、職種の不足がないかとチーム医療のメンバーの再編成(チームの変更)、結果をきちんとお話ししフォローする、必要な時他科や他院への紹介をきちんとする、突発的なことにきちんと応対することなどの患者対応(ケースマネージメント)、自己管理を推進するための策、医師自体が糖尿病治療の勉強をしていること、電子媒体を利用して情報の共有を便利にする策が挙げられました。これらの策が起動すると、HbA1c の低下、LDL コレステロールの低下、高血圧の是正、網膜症スクリーニングの促進、腎症に関する検査の促進、足ケアの促進と正の連動をしました。患者教育だけではなく、いろいろな気配りをして始めて糖尿病の良好な管理が成り立つことが改めて理解できます。医療者側と患者さん側がもっともっと近づいて情報の共有をし、お互いが切磋し、より良い方向を目指していこうねと確認しチャレンジしていくことが重要といえましょう。
◆DIACET ?
  自分の糖尿病の状況をできるだけ良好にしたいと糖尿病センターに来院くださっている患者さんの糖尿病に関する情報はなんでも、我々はしっかり把握しなければなりません。足の小さな骨にヒビが入ったが糖尿病と関係ないだろう、歯槽膿漏がすこしあるのだが昔からだから・・と、我々が聞きそびれていることがどうも多いようです。
  もう一歩、糖尿病を良くするために、合併症を未然に防ぐためにそして進行させないために、もっともっと患者さんの声やお思いを傾聴したい、そういう思いで、実態調査のアンケート(DIACET)を開始いたします。そのアンケートの結果をお一人おひとりに返却できるシステムも構築します。患者さんに大いに利用してもらう糖尿病センターを目指していきます。
 

糖尿病と健診

東京女子医科大学付属成人医学センター
東京女子医科大学糖尿病センター
准教授
 宇 治 原 典 子
  糖尿病患者の数は世界各国で増加の一途をたどっています。2010 年の厚生労働省の調査では30 歳以上の男性の17.4%、女性の9.6%が糖尿病であると推計されています。 この増加を止めるために、耐糖能異常の早期発見と早期指導が重要です。そのために、健診は大きな役割を果たしています。
◆日本人間ドック学会報告
  日本人間ドック学会では、1984 年から、認定施設、指定施設を対象に全国集計をおこなっています。人間ドックの受診者は年々増加しており、1984 年の調査開始時は41 万人でしたが、2010 年には308 万人に達しました。しかし、受診者のうち、異常所見のない健常者は、1984 年の29.4%から8.4%と年々減少しています。生活習慣病と密接に関連する肥満者(27.7%)、高血圧者(18.7%)、高コレステロール者(27.3%)、高中性脂肪者(13.8%)、耐糖能障害者(20.3%)、肝機能障害者(26.9%)はいづれも増加傾向をたどっており、2010 年には高中性脂肪以外のすべての項目が一斉に前年より増加しました。
◆会員制の健診
  成人医学センターは、会員制の健診および企業契約の健診をおこなっています。2005年に健診を受けた会員281 名の動向をみてみますと、253 名が耐糖能異常者(空腹時血 糖115.9 ± 4.5mg/dl、HbA1cJDS5.6 ± 0.5%)であり、その31.8%が5 年後に糖尿病と診断されました。2005 年時のHbA1c 高値、高脂血症が有意な糖尿病発症危険因子として挙げられ、肥満、高血圧、インスリン抵抗性もその傾向を現しています。健診でこのような異常を早期に発見し介入することが、これまでの報告通り急務と思われます。
  現在健診会員数は約2,500 名で、原則として年2 回の健診を受けていただいています。会員には、半年に1回葉書きで通知し、受診予約をお取りしていますが、会員年齢層の高齢化とともに、徐々に受診率が低下しています。この5 年間をみると、毎年2 回受診している方は36.9%であり、5 年間1 度も受診されなかった方は5.2%でした。2011 年受診者の耐糖能異常(空腹時血糖値110‒125mg/dl)者は11.2%でしたが、年2 回継続的に受診していた会員に限ると、耐糖能異常者は10.0%と低下傾向になります。継続的に健診を受診する会員は意識が高く健診が耐糖能異常の予防によい影響を与えているともいえましょう。
◆受診率と継続率
  受診者数増加のために、会員家族の家族健診や、ビジター健診、体験ドックなどを行っています。また、継続率をあげるために会員通信を発行し、毎号テーマを決めて健診結果の見方や疾患の症状、治療などを掲載しています。異常発見時の迅速な対応も重要な要素であることから、外来施設を併設し、すみやかな治療に繋げるシステムをとっています。また、大学病院の付属機関である点を生かして、耐糖能異常や糖尿病発見時には、糖尿病センターでの教育入院、血糖コントロール入院にも繋げています。
  健診の受診率と継続率をあげる工夫の改善、質の良い早期介入にて、生活習慣病の予防につなげていきたいと思います。
 

肥満でお悩みの方のための
グループミーティング

東京女子医科大学糖尿病センター
非常勤講師
 塚 原 佐 知 栄
◆目指すところ
  平成23 年11 月から、月1 回の「肥満でお悩みの方のためのグループミーティング」を始めました。本年7 月で8 回目を迎えます。お陰様で現在までにリピーターを含む延べ22 名の方に参加いただきました。年齢は30歳~ 70 歳代と幅広く、キャリアウーマンも半数を占めます。
  糖尿病とともに、肥満ぎみないし肥満がある方には、減量は最も重要な治療の一つです。外来診察時患者さんの生活に介入することになりますが、なかなか効果が上がらないのが現状です。その一方、教育入院では1 週間であっても1-3㎏程度の減量がすぐに実現します。
  自分でどうにかして減量したい! この切なる思いをたくさんいただき、「自分の生活の良し悪しへの気付きと変容」、「減量へのモチベーションの活性化・維持」への力添えとなればと、「肥満でお悩みの方のためのグループミーティング」を開始しました。
◆どんなことをするの?
  会は毎月第1 金曜日、18 時からです。時間制限はしておりませんが、ほぼ2 時間程度です。私は、自己紹介とともに、このミーティングは参加者によって毎回新たに創られ ていくことと、この時間は普段の限られた外来の時間内ではなかなか伝えきれない思いを話す場・聞く場、お互いの治療や生活での思いを話す場・聞く場、減量の目標・成果を伝える場、お互いのモチベーションを高める場、固定化した概念にとらわれず一人ひとりが自由なスタンスで参加できる場であることを説明します。あくまで集団のエネルギーを良い方向に個人に還元していく場であるので、ネガティブな方向へ向かう場合には多少の方向転換を促すこともあることを付け加えます。
  参加された方は順番に自己紹介しながら、参加しようと思った理由をお話します。この時点で、早くも共感しあう方が現れて話が盛り上がることもあります。逆に、なかなか自分の言葉が出せない方もおられ、適宜「合いの手」を入れて流れをつくります。
  参加者の自己紹介時のお話しだけで、キーワードがいくつも挙がってきます。それを白板に列挙していきます。これによって、司会者の傾聴の姿勢を示すことができ安心感をもって話せるようになり、内容を可視化することでテーマを共有し、これからの進行を安定化させることができるようになります。たとえば、「減量したいができない」、「一人でダイエットしようと思っても続かない」、「スポーツクラブに入会したが行けない」、「減量に成功してもその都度リバウンドして現在は血糖が悪化」、「おなか一杯たべないと気が済まない」、「食べても太らない食品はないか」、「仕事のストレスで帰宅後夜中に過食してしまう」、「夫がいない日に過食する」、「仕事が忙しく運動する暇がない」、「年と共に痩せにくくなっていく」などです。いずれも、日常診療のどこかで聞き覚えのある共通の悩みごとです。さぁ、これらをどう解決していきましょうか?
◆痩せない理由―実はみんなわかっている
  悩みの打開の仕方、ダイエット食品に関する情報からストレス解消法や精神論に至るまで、参加した方々が自ら「こうしたら?」と提案してくれるのです。毎回新鮮な提案です。「悩み」それは即ち「直接的な痩せない原因行動/ 因子」であり、次に必要になるのは「行動変容(精神的変容も含む)」なのです。本ミーティングの最終目的はこれです。今後も、参加者の方々とともに充実した時間をもつことができればと思っております。

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