DIABETES NEWS No.80
 
No.80 2004 May/June

 5月13日から15日に東京国際フォーラムで開催されます第47回日本糖尿病学会のランチョンセミナーとイブニングセミナーの紹介をいたします。

どのようなランチョンセミナーが?
 第1日には、糖尿病治療の新たな戦略、食後高血糖と心血管疾患・動脈硬化、インスリン抵抗性と ARB、ED 治療と QOL など6つのランチョンセミナーが行われます。
 第2日には、メタボリックシンドローム、高血糖と白血球機能異常、食後高血糖と脂質代謝異常、ED 治療薬、大血管障害予防に関する大規模試験、血糖モニタリングの近未来、血糖自己測定器の使い勝手の解析など8つのセミナーがあります。
 第3日には、患者の QOL に果たす心理社会的な問題、脂質管理、大血管障害、神経障害の診断・治療、採血部位と血糖値、糖尿病ケアチームの課題など7つのセミナーを予定しています。

イブニングセミナー
 第1日には、PKC 阻害薬と糖尿病性合併症、アディポサイトカインと RA 系抑制薬、食後高血糖と血管障害、β細胞の生化学と再生医療などの5つのセミナーが、第2日にはチアゾリジン薬の多角的検証、神経障害の診断・治療、フットケアの内科的・血管外科的考察、糖尿病における動脈硬化の疫学研究、アナログインスリン時代を迎えたインスリン治療などの6つのセミナーが行なわれます。これらのセミナーの演者として海外からも多くの先生方をお招きしています。多数の皆様の参加をお待ちいたしております。

新しく取り入れる整理券方式
 今回のランチョンセミナーでは入場整理券を発行いたします。最近の学会のランチョンセミナーはとても盛会で、セミナー開始前から会場前に長蛇の列ができることが少なくありません。
 このような混乱をなくして、前のセッションもゆっくりと聴くことができるように、整理券方式にいたします。当日の朝(第1日は7:30、第2日と3日は7:45)から学会登録会場で、ご希望のランチョンセミナー参加整理券を1人につき1枚発行いたします。よろしくご協力の程お願いいたします。
 


10年目を迎えた本学会
 日本糖尿病眼学会は、糖尿病による眼合併症の様々な問題を、眼科医のみならず内科医やコメディカルの連携のもとに検討していくという目的で設立されました。今年で10年目を迎えた本学会は、3月12日から14日まで、九州大学大学院医学研究院病態制御内科学名和田新教授の主催で福岡国際会議場で開催されました。例年本学会総会は眼科的な演題が中心でしたが、今回は6年ぶりで内科の先生が主催され、総会のテーマも「眼科医、内科医、コメディカルの連携をめざして」ということで、内科的な話題やコメディカルとの連携に関する演題が多く盛り込まれました。眼科医のみならず、多くの内科医やコメディカルが参加して、最終的には登録者数は千名近くにのぼり、盛会のうちに終えました。

特別講演と教育講演
 特別講演として、杏林大学眼科の樋田哲夫教授が「最近の糖尿病網膜症に対する硝子体手術」という演題名で、最近著しく進歩を遂げている糖尿病網膜症の硝子体手術成績の最新のデータを発表されました。熊本大学内科の荒木栄一教授は「糖尿病合併症研究の新展開」という演題名で糖尿病合併症発症のメカニズムの最近の研究成果について発表されました。
 教育講演は4題(糖尿病網膜症の分類と診断、検査、光凝固、硝子体手術)あり、最近のトピックスを盛り込んでそれぞれを4名の演者によって解説されました。

シンポジウム
 今回は3つのシンポジウムが企画されました。「糖尿病網膜症治療の分子標的」は新しい糖尿病網膜症治療法を視野に入れ、後期糖化反応生成物 (AGE) の形成、プロテインキナーゼC (PKC) の活性化、酸化ストレス、抗血管新生遺伝子治療、血管内皮増殖因子 (VEGF) に関する最新の研究が報告されました。「黄斑浮腫の診断と治療」は、糖尿病網膜症のなかでも視力低下の原因となる厄介な病型である黄斑浮腫に関して、新しい診断装置である光干渉断層計 (OCT) による所見、光凝固療法、硝子体手術、ステロイド局所投与の治療法について討論されました。「眼科医、内科医、コメディカルの連携をめざして」は、外来患者管理について、糖尿病眼手帳の使用、電子カルテの応用が報告され、"眼科医に聞きたいこと望むこと"として、内科医と看護師から眼科医へ提言がなされ、視力低下患者の自立支援として、ロービジョンリハビリテーションとインスリン注入補助器具について紹介されました。

糖尿病眼合併症の撲滅のために
 会場では、眼科医、内科医、コメディカル、それぞれによる活発な討論が各所で行われ、名和田会長の本学会主旨である糖尿病眼合併症の撲滅のために、眼科医、内科医、コメディカルの連携が一層深められた学会になったと思われました。
 


 近年の糖尿病人口の増大に伴い、糖尿病の3大合併症の1つである腎症を合併した患者さんも年々増加していることは周知の通りです。その結果、1998年以降わが国の新規透析導入患者さんの原疾患として、糖尿病性腎症は第1位を占めるに至っています。一方、糖尿病性腎症の発症に家族内集積が認められることから、従来から何らかの遺伝因子が腎症発症に関与していると考えられてきました。
 しかし糖尿病のような生活習慣病の発症には、遺伝因子以外に高血糖や高血圧など環境因子の関与も大きく、さらに複数の遺伝因子が関与していると想定されるため、これまでの研究方法では特定の遺伝因子の同定が困難とされてきました。

候補遺伝子アプローチによる糖尿病性腎症疾患関連遺伝子の検索
 これまでに、疾患関連遺伝子の同定にはさまざまな方法が試みられてきました。最も頻用されているのは候補遺伝子アプローチによるケース・コントロール解析といわれる方法です。代表的な遺伝子としては、アンギオテンシン変換酵素 (ACE) 遺伝子、アンギオテンシノーゲン (AGT) 遺伝子、アンギオテンシンII受容体 (AT1R) 遺伝子、アルドース還元酵素 (ALR2) 遺伝子、アポリポプロテインE (ApoE) 遺伝子などが挙げられます。これらの遺伝子と腎症発症との関連に関してこれまで多数の研究が行われてきましたが、一致した見解は得られていません。

全ゲノムスキャンによる解析法
 一方、マイクロサテライトをマーカーとした全ゲノムスキャンは多大な労力と費用を要し解析が容易でないため、これまでごく少数の研究が行われたにすぎませんが、Pima Indian の家系を用いた検討では第3、第7および第20染色体に、また discordant sib-pair を用いた連鎖解析では第3染色体長腕に疾患感受性を示したとされています。しかしこれらの連鎖解析では、いずれも特定の遺伝子を同定するには至っていません。
 Single nucleotide polymorphism (SNP) はヒトゲノム上最も高頻度に存在するバリエーションであり、数百塩基に1つの割合で存在することから、疾患関連遺伝子探索のための強力なツールとして最近注目されています。われわれは、糖尿病性腎症の発症に関わる遺伝因子を解明する目的で SNP をマーカーとしたゲノム全体の系統的なケース・コントロール解析を行い、その結果、腎特異的に発現している sodium/chloride co-transporter、SLC12A3 遺伝子内のエクソンにある SNP が、糖尿病性腎症の発症進展に関わる有力な候補遺伝子であることを明らかにすることができました。

腎症治療への期待
 ヒトゲノムの全塩基配列がほぼ明らかにされた今、今後より多くの疾患関連遺伝子の同定により、疾患予知マーカーや新たな治療薬が開発され、糖尿病性腎症の治療に活用されることを期待したいと思います。
 
 

第47回 日本糖尿病学会年次学術集会

The 47th Annual Meeting of Japan Diabetes Society

糖尿病根治の時代への扉を開く

会期 2004年5月13日(木)~15日(土)
会場 東京国際フォーラム/よみうりホール
会長 岩本安彦(東京女子医科大学 糖尿病センター)

特別講演

Graeme Bell (University of Chicago,USA)
John Todd (University of Cambridge,UK)
浅島  誠 (東京大学大学院総合文化研究科)

■プレナリーレクチャー
 春日 雅人  (神戸大学大学院医学系研究科)
 山本  博  (金沢大学大学院医学系研究科)
 清野  進  (神戸大学大学院医学系研究科)
■パネルディスカッション
 ―糖尿病根治の時代への扉を開く―
 1型糖尿病 診療の未来
 2型糖尿病 診療の未来
■教育講演
■ワークショップ
 1型糖尿病の根治療法としての膵 (島) 移植
 若年発症2型糖尿病:疫学・治療・予後
 コントロール基準と日本におけるエビデンス
 子宮内環境と糖尿病の発症
 アディポサイトカイン研究の新展開
 ITと糖尿病診療への応用
■シンポジウム
 大規模臨床試験とその後の展開
 糖尿病および合併症の原因遺伝子はどこまで解明されたか
 糖尿病における血管内皮機能障害
 糖尿病関連新薬開発の最前線
 メタボリックシンドロームをめぐって
 2型糖尿病の発症予防
 膵β細胞研究の最前線
 加齢と糖尿病
 糖尿病における再生医療の基礎と臨床
 チーム医療と療養指導士の役割
 眼合併症の成因と治療
 運動療法の基礎と臨床
■一般演題:口演/ポスター
■ランチョンセミナー
■イブニングセミナー
■市民公開講座

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