DIABETES NEWS No.128
 
No.128 2012 May/June 

 1型糖尿病と違って2型糖尿病はいつごろ発症したかはわからないのが現状です。昨年はひっかからず今年の検診で指摘されたなら、この1年のどこかで発症したなどと想像されるに過ぎません。
治療中断と合併症の発症、重症度
「検診で診断されて糖尿病センターを初診されるほうが合併症はあっても軽い」と仮説を立てて、糖尿病センターを一定期間内に初診された方の治療中断歴と初診時の合併症の重症度を調査したことがあります(2003)。健診などで糖尿病と診断されてから医療機関受診が1回/年もない時期があることを治療中断歴ありと定義してみました。糖尿病センター初診時の合併症の有無や重症度は過去の検診歴の有無とは関連なく、過去の治療中断歴の有無ならびに中断年数と相関することがわかりました。

できるだけ早くに治療開始を
 発症時期がわからないのですから、せめて診断されたらすぐ治療開始するのがよいことは一目瞭然です。そして中断なく加療をつづけていただく...。
 2008年に中国から報告された論文はセンセーショナルなものでした。新規診断の2型糖尿病患者さんにインスリンポンプによる持続インスリン皮下注入(CSII)群とインスリン頻回注射(MDI)群と経口薬(OHA)群に分けて2週間だけ治療しその後は薬物治療を中止し、血糖が悪化するかどうかを経時的に観察したのです。結果はCSII群がもっとも成績がよく、次いでMDI、OHA群という順序でした。2型糖尿病は診断早期からインスリン治療をしたほうがインスリン分泌能は保持されやすく、メリットがあると解釈されます。

短期間インスリン治療の有効性を保持するには
 本年1月に「診断早期の短期間インスリン治療の効果が長続きする方と長続きしない方がいる、この違いはなにか」に迫る論文がやはり中国から報告されました。結論からいいますと、糖尿病を自分でしっかり理解している、自己管理できる能力がある、ポジティブな考えのできる方が有意にインスリン治療の効果を長引かせていました。

診断早期に糖尿病にポジティブな考えを
 薬物使用も大事なことですが、2型糖尿病に対して前向きな態度を持ってもらうことがより大事といえそうです。
 


糖尿病と内分泌疾患のかかわり
 糖尿病があって内分泌疾患を合併する場合と、内分泌疾患があってそのホルモンの異常のため血糖値が高値となり糖尿病と診断される場合があります。

糖尿病と内分泌疾患の合併
 多腺性自己免疫症候群(autoimmune polyendocrine syndrome:APS)は、自己免疫疾患の合併する症候群で近年 APS1-4 まで分類され ています。APS-1 は、皮膚カンジダ症、アジソン病、副甲状腺機能低下症を合併し AIR(autoimmnune regulator)遺伝子の異常であることが明らかになり、1型糖尿病も4~12%合併するとされています。APS-2 はアジソン病に自己免疫性甲状腺疾患または1型糖尿病を合併する症候群です。また APS-3 は自己免疫性甲状腺疾患にアジソン病や副甲状腺低下症以外の疾患の合併する群で、1型糖尿病と合併する疾患はこの APS-3 に分類されます。

内分泌疾患による糖尿病
 特徴は、内分泌疾患の治療によって血糖値の改善がみられるという点です。糖尿病として加療されている患者さんの中にこのような疾患が隠れていないか考えることが大切と思われます。
 1)クッシング症候群(クッシング病):副腎皮質からのコルチゾール産生の自律性過剰分泌によって引き起こされる病気で下垂体腺腫での ACTH 産生過剰によるもの、副腎自体よりのコルチゾール過剰分泌によるもの、またそれ以外臓器の悪性腫瘍による ACTH 産生によるものに大別されます。臨床所見としては、満月様顔貌、中心性肥満、皮膚線条など、また高血圧や低カリウム血症を呈することもあります。血糖上昇の機序として、肝臓での糖新性の亢進、グリコーゲン分解亢進などによる糖放出亢進、脂肪や筋肉でのブドウ糖取り込み低下、またグルカゴン分泌亢進などが考えられています。
 2)先端肥大症:脳下垂体の腫瘍によって、成長ホルモンの自律性分泌亢進によるものです。症状は、手足容積の増大、前額部の突出、巨舌などがあり、成長ホルモンやソマトメジン過剰分泌、ブドウ糖負荷での抑制の減弱、分泌負荷試験による過剰反応などの血液検査と下垂体 MRI 検査による腫瘍の確認により診断します。成長ホルモン過剰のため心筋肥大による心不全、悪性腫瘍の合併(消化管など)や高血圧の合併も注意が必要です。血糖上昇の機序としては、成長ホルモンによる肝臓での糖の放出亢進に加え末梢での糖の取り込み低下などのインスリン作用減弱によると考えられています。
 3)原発性アルドステロン症:副腎皮質よりのアルドステロン過剰産生による疾患で、高血圧、低カリウム血症、耐糖能障害を呈しますが、耐糖能障害は低カリウムによるインスリン分泌低下によるものと考えられています。アルドステロン/レニン活性比、CT や副腎シンチによって疑い、最終的には、ACTH 負荷も含めた副腎静脈サンプリングによって診断します。
 4)褐色細胞腫、バセドウ病:褐色細胞腫は、副腎髄質からのカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)などの過剰分泌による疾患で、CT、MRI や放射線シンチなどで診断します。バセドウ病は、甲状腺ホルモン過剰によるカテコールアミンの感受性亢進によって起こる病気で、血液検査、甲状腺エコー、シンチなどで診断します。カテコールアミンは、α2という受容体を通してインスリン分泌を抑制し、またβ2によって肝臓でのグリコーゲン分解や糖新性亢進によって耐糖能障害を引き起こします。
 


糖尿病透析患者の血糖管理の意義・問題点
 透析導入に至った時期でも血糖コントロール は生命予後と関連することから、血糖管理は重要です。透析患者の血糖管理はインスリン治療が原則ですが、高齢者あるいは高度視力障害者などではインスリン治療を安全に行うことが困難な場合があります。したがって実臨床では、経口血糖降下薬を選択せざるを得ない場合が少なくありません。
 そのような患者における治療として本稿では (1) 透析クリニックによるインスリン管理、(2) 使用可能な経口薬をご紹介します。

血液透析患者における透析直後のみの持効型溶解インスリン投与の有効性と安全性
 血液透析患者は一般に週回通院するので、透析終了時にクリニックのスタッフがインスリン注射を行うことが可能です。
 そこで、2型糖尿病血液透析患者を対象に透析直後の持効型溶解インスリン投与の有用性ならびに安全性を検討するために、以下の介入試験を行いました。対象は6(男女3名ずつ)、平均年齢64歳、平均糖尿病罹病期間および透析期間は25年、4.5年です。インスリン自己注射は全例不可能でした。インスリン開始時および8週後に、透析日と非透析日の血糖日内変動(各食前後、就寝前、透析開始時と終了時血糖)を評価し、糖化アルブミン(GA)は1ヶ月ごとに6ヶ月間測定しました。
 透析終了直後にインスリングラルギン4~6単位の投与を開始し、6~24単位まで漸増しました。その結果、インスリン投与時から24時間までの血糖曲線下面積および GA は有意に低下しました。なお、低血糖は認めませんでした。
 本研究の結果から、糖尿病血液透析患者における透析直後のみの持効型溶解インスリン投与は安全に血糖管理しうることが示唆されました。

経口糖尿病薬による透析患者の血糖管理
 以前は慎重投与であったαグルコシダーゼ阻害薬、速効型インスリン分泌促進薬のミチグリニドに加え、レパグリニド、ジぺプチジルぺプチダーゼ-4(DPP4)阻害薬のビルダグリプチン、アログリプチン、リナグリプチンが2012年2月現在、透析中であっても使用可能となりました。
 DPP4阻害薬はグルコース濃度依存的に血糖を降下させることから、単剤では低血糖発症のリスクが低く、腎不全患者においても有効かつ安全であると考えられます。

まとめ
 血液透析患者の血糖管理として、透析直後のみのインスリン投与というユニークな治療法、ならびに使用可能な経口薬を紹介しました。
 新規糖尿病薬による腎不全患者の血糖管理についての研究が待たれます。

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